読書

 藤原正彦「数学者の言葉では」を現在読んでいる。その「ヤングアメリカンズ」から、  「アメリカには受験戦争なるものが存在しない。確かにハーバード、エールなど一流大学と呼ばれるものもあるが、そこに全国の秀才が集まるとは限らない。というのは、それらの多くは東部海岸にかたまっている上、私立大学であるから、そこで学ぶには多額の授業料と生活費を用意しなければならないからである。一方の州立大学では、州内の学生に対して授業料を特別に安くしている。だから、抜群に優秀な生徒であっても、家が富裕でその上名門校に対する憧れでもない限りは、地元の州立大学に行くことになる。すなわち大学間の格差というものがそれほどないということになる。そして、これらの州立大学では、日本の入学試験に相当するものがない。というわけで受験戦争がありえないから、当然のことながら生徒は勉強をしない。実際向こうの学生は、高等学校までの段階で、勉強らしい勉強をほとんどしていないといってよい。従って高校卒業時における彼らの知識量は慨嘆すべきほど貧しい。
 しかし、その代わりに、大学に入るときには、素朴ではあるが学問に対するあこがれのようなものを抱いている。その上、ごく現実的に、高い授業料に見合うだけの学問を身につけないと損をすると考えている。だから向学心は極めて強い。この点は、長年にわたる受験勉強で疲れ果てた日本の学生が、大学に入ると同時に人生の目的を半ば達したような気持ちになり、あとは遊びながらいかに要領よく卒業するかに腐心するのと対照的であろう。
 彼らの勉学意欲は旺盛だから、それにこたえる教授も大変だ。教え始めのころ、宿題を学生に要求されてまごついたことがあった。また、老婆心からつい少なめにしてやっては、もっと増やせと催促されてあわてたこともある。どんなに大量の宿題を出しても、ほとんど全員がきちんと解いて提出するから、それを見るだけでも苦労だ。授業中でも、難所にさしかかると、質問があちらこちらから起こる。時には、教授と学生の間で意見やジョークの応酬があったりもする。だから教室には熱気がこもっている。」
 少し長かったが、国の違い、システムの違いはあるが、

数学者の言葉では (新潮文庫)

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